神奈川県が作成した地域の実情に応じた具体的なナラ枯れ被害対策の実施に資するための基本的な方針
森林病害虫防除法の規定(考え方)では、森林病害虫等の被害対策は、森林所有者又は管理者が実施することが前提となっている。このため、本県は、森林所有者又は管理者が実施する被害対策に対して市町村等関係機関と連携しながら、ナラ枯れ被害の問題点や規模、周辺環境、所有・管理形態等に応じ、適切かつ柔軟な助言指導と技術支援を行う。
山間部だけでなく都市域のような暮らしに密接した地域においても多く発生していることから、安全の確保を最優先としつつ、景観の保全や、歴史的、文化的価値の保全を優先として被害対策を実施する。
確保・保全 すべきもの |
優先する対策の考え方 | 対策の対象となる 具体的な事例 |
憂慮される現象 |
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安全 | 家屋、道路、公共施設等や通行人、公園等施設利用者等への被害防止 | 住居及び道路等のインフラ並びに不特定の人が立ち入る散策道及び登山道沿い等に近接し、倒伏や落枝による人身被害及び物的被害の恐れがある場合 | 倒木、根返り、幹折れ、落枝 |
景観 | 観光地、公園等における利用者の印象の悪化の防止 | 人身被害の懸念は少ないものの、景勝地などで保全する価値の高い場合 | 葉の赤変、立ち枯れ |
歴史的・ 文化的価値 |
歴史的・文化的価値の損失を予防 | 人身被害の懸念は少ないものの、歴史的又は文化的価値が高く保全を必要とする場合 | 天然記念物、保存木等の消失 |
確保・保全 すべきもの |
具体的な対策 | ||
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予防 | 駆除 | 森林整備等 | |
安全 | ※必要に応じて 薬剤樹幹注入 資材被覆 粘着シート被覆 |
伐倒駆除 |
危険木伐採(予防伐採) ※必要に応じて |
景観 | 薬剤樹幹注入 資材被覆 粘着シート被覆 |
※必要に応じて 伐採駆除 立木くん蒸 資材被覆 粘着シート被覆 |
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歴史的・ 文化的価値 |
カシナガは、古くから日本に広く分布している昆虫であり、これまでの他県の対策状況から判断して、カシナガの被害を根絶することは、莫大な費用と労力を費や したとしても極めて困難であり、被害の軽減を行うにとどまっている。また、カシナガやナラ菌は森林生態系の構成種として一定の役割を担っていると考えられるため、 根絶することは適当ではない。
このことから被害対策は、森林やその周辺の被害状況に応じて手法を変える必要がある。
被害状況区分の目安 | 防除の考え方 |
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未被害地 (周囲数十km以内にナラ枯れ被害地が存在しない森林) |
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未被害地 (周囲数十 km 以内にナラ枯れ被害地が存在する森林) |
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微害地 (ha 当り、1~10 本程度の被害が発生した森林) |
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中・激害地 (ha 当り、10 本程度以上の被害が発生した森林) |
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ア 予防
イ 駆除
ウ 森林整備等
※ナラ枯れ被害対策マニュアル改訂版(一般社団法人 日本森林技術協会 H27.3)p3 1-2.ナラ枯れ被害の影響 枯死木による危険「枯死後1~2年で小枝が、3年ごろから大枝が落下し」との記載がある。)
倒した木は、チップや木炭、薪等として利活用することで材の中のカシナガを駆除することができる。チップや木炭にする場合は、カシナガの羽化脱出前の5月までに最寄りのチップ工場や炭窯等で破砕・炭化処理を行う。また、薪にする場合は、カシナガの幼虫が孔道から這い出て死滅するように、幼虫がさなぎになる前(2月)までに割材処理(薪割り)を行う。
いずれの処理も適切な時期に行えない場合は、被害を拡大させるおそれがあることから、カシナガが脱出するおそれのある枯死の翌年秋までの間は材の移動を控える。なお、未被害地への未処理材の持ち出しは厳禁である。
コナラ末口 44㎝ L=200㎝(樹高4m~6m) から 幅7㎝厚さ2㎝長さ200㎝の板を32枚造材
このうち天板として使用可能な板は15枚(元丸太との材積比 16%)